源氏物語の世界

源氏物語は千年の昔に紫式部によって描かれた長編大河小説です。その情景に現れる儀式や風景、衣装、その他さまざまな美意識が後世で参考とされていきます。箏曲地唄の中にも源氏物語ものがあります。

例えばお箏を習っている方で最もなじみにあるのは「夕顔」なのではないでしょうか。また、八王子文化祭において演奏した「新浮船」もその一つです。

内容は、結構濃い-!恋愛小説ですが、古典の言葉に隠され、ヴェールがかかった「何となく」な感じで演奏するのが良いのでは、と思っております。


夕顔の君(月岡芳年『月百姿』より)

源氏物語に登場する夕顔の君は元は源氏の義兄であり、友人である頭中将の恋人出た人です。正妻に疎まれ五条辺りにひっそりと隠れ住んでいます。

ある夜、源氏の誘いで「なにがしの院」なるところに出かけるのですが、そこで物の怪に襲われ亡くなってしまうのです。その物の怪が源氏の恋人の一人、六条の御息所の生霊だと思われるのです。

さて、この時の登場人物の年齢です。源氏17歳・夕顔19歳・六条の御息所24歳だそうです。改めて確認しますと考え込んでしまいますね💦

地唄の夕顔の歌では前歌は二人の出会いが歌われ、後歌は夕顔が亡くなってしまった悲しさを歌っています。

 

<地唄 夕顔 歌詞>

住むやたれ 訪ひてやみんと黄昏に 寄する車の音づれも 絶えてゆかしき中垣の すき間求めて垣間見や かざす扇に焚きしめし 空だきものの ほのぼのと 主は白露 光をそえて

いとど映えある夕顔の 花に結びし仮寝の夢も さめて身にしむ 夜半の風

昔昔の箏(琴)のこと

こちらは群馬県伊勢崎市の相川考古館所蔵の「弾琴男子像 (だんきんだんしぞう)」

なんと椅子に座って膝の上に乗せてますね。

雅楽で使われる「和琴(わごん)」の原型といわれているそうです。この埴輪の琴の絃の本数はわかりませんが、和琴の絃は6本とか7本らしいです。

実は現在の箏は中国大陸からの渡来物が原型で、これは日本独自のもので別の系譜となるらしい。

この埴輪は楽しそうに見えますね。よく言われるのは祭祀で重要な役割を楽器という物は持っていたということです。ですがこの表情を見ていると、音楽に合わせてみんなで楽しく歌い踊る様子が似合う気がします。

どんな曲を奏でていたのでしょうかね(^^♪

和琴についても源氏物語に登場します。確か光源氏が蘊蓄を述べています(^◇^)

 

宮廷人の楽器愛玩

楽器、それはその昔は一つ一つが貴重な物だったのではないでしょうか。そのせいもあると思うのですが、昔の宮廷人達は自分の楽器に名前をつけています。夢枕獏の「陰陽師」などにも『玄象(げんじょう)』という琵琶が登場したと思います。箏にも愛称をもちろん付けたそうで、例えば醍醐天皇の箏には「しら丸」「鬼丸」という人の名前のような愛称が付けられています。「獅子丸」などという名前の箏もあったそうですが、何とも勇ましい名前が付けられたものです。また、醍醐天皇は前述の二面の他にも「秋風」という箏が大変お気にいりで、この「秋風」は醍醐天皇と一緒に御陵に葬られたとのことです。後世、茶道具等にも銘が付けられますが、こういった習慣が広がっていったものでしょうか。しかし、名前を付けると愛着が深くなっていくのはわかります。皆さまもこっそり自分の楽器に愛称を付けて呼んでみてはいかがでしょうか?

(参考資料:宮崎まゆみ著 「箏と箏曲を知る事典」)